葬儀は儲かる?フランチャイズ加盟で年収1000万円は目指せるのか?
参考記事:葬儀屋(葬儀ビジネス・葬儀業者)のフランチャイズ!FC本部の募集要項を一覧比較。各社戦略や、葬儀屋(葬儀ビジネス・葬儀業者)のタイプ・ジャンル別に分析。‖フランチャイズ募集ナビ
葬儀ビジネスの基本と市場背景
2025年の日本国内の死亡者数は年間約143万人※推定(厚生労働省統計を基に算出)。高齢化の進行で死亡数は今後もしばらく増加傾向にあり、葬祭関連サービスの需要は底堅く推移しています。さらに直葬・家族葬の台頭、オンライン中継やメモリアル演出など形式の多様化が進み、平均費用は118万〜162万円の範囲で推移(全国調査より)。こうした背景から中小事業者や新規参入者でも機会をつかみやすい状況となっています。
葬儀業界の全体像と今後の需要
全国の葬儀会館・ホール数は約8,000施設。新設よりも買収・事業承継が活発で、専門スタッフの確保が参入障壁です。一方、家族葬の比率が5年で約1.7倍に拡大したことで小規模施設やモバイル型ホールの需要が上昇し、初期投資の軽量化が進んでいます。2030年頃まで年間死亡者数は微増すると見込まれており、市場全体の規模は1.6兆円前後で横ばい〜緩やかな伸長が予測されます。
少子高齢化と地域ニーズの変化
少子高齢化の進展により親族・友人の人数が減少し、都市部では「十数名規模」の家族葬が主流になりつつあります。地方では伝統的な一般葬が根強い一方、祭壇や演出を簡素化して費用を抑えるニーズが増加。人口流出が続く地域では「移動式セレモニー車」の活用が注目され、ホール固定費を抑える新サービスが浸透しています。立地選定では高齢者人口比率だけでなく、近隣火葬場・寺院との距離、駐車場需要も加味するとミスマッチを防げます。
フランチャイズ展開が広がる背景
葬儀業は法令・慣習に詳しい人材が不可欠で、個人開業ハードルが高い業態です。そのため「ノウハウ一式+集客支援+人材研修」をパッケージ化した本部が増加。初期投資を抑えたい起業家や葬祭関連経験者の独立先としてフランチャイズが浸透中です。特に1ホール1スタッフ体制とオンライン受注管理システムを組み合わせ、ロイヤリティを粗利ベース3〜5%に抑えたモデルが支持を集めています。
■葬儀フランチャイズの仕組みと特徴
フランチャイズ契約では、本部が商標・運営マニュアル・研修・集客支援を提供し、加盟者はロイヤリティを支払います。契約期間は5〜10年が一般的で、更新料を設定する本部もあります。「ホール保有型」「提携会館利用型」「モバイル葬儀車型」の三方式が代表的で、資金計画と商圏特性に応じて選択可能です。
●フランチャイズ形式の種類と提供モデル
・ホール保有型:延床200〜500㎡の会館を自社所有またはリースし、駐車場20台以上を確保する王道モデル。
・提携会館利用型:地域の民間会館や公共斎場を式ごとに利用し、固定資産を持たずに運営資金を圧縮。
・モバイル葬儀車型:移動式祭壇車を使用し、自宅前・寺院境内などで小規模葬を行う新興モデル。
●開業までの流れと必要資金
資金計画の策定と自己資金比率の確認
本部担当者との面談で商圏調査と支援内容を精査
物件選定と内装施工(ホール型の場合)
研修受講と資格取得(葬祭ディレクターなど)
システム導入とスタッフ採用
開業前販促として寺院・病院・ケアマネへの営業を実施
【費用項目と金額目安】
加盟金:300〜500万円(商標・マニュアル使用料)
内装・設備:1,200〜2,500万円(ホール規模により変動)
車両・霊柩車:300〜700万円(中古導入で圧縮可能)
研修・人件費:50〜150万円(開業前3か月分)
運転資金:300〜600万円(3か月分固定費)
●本部が提供するサポート内容
・24時間搬送コールセンター
・遺体処置・司会進行など専門スタッフ派遣
・広告共同出稿や自社ポータル掲載
・法規制更新情報と書式テンプレート共有
・定期研修とオンライン学習プログラム
■実際の収益構造と年収シミュレーション
葬儀ビジネスの売上は「施行件数 × 平均単価」で決まり、粗利率は40〜55%が一般的です。以下は※推定モデル(一般葬10%・家族葬70%・直葬20%構成)。
【収益シミュレーション例】
高稼働モデル(年間80件、平均単価120万円)
売上:9,600万円 → 粗利4,800万円 → 営業利益2,600万円 → 可処分所得約1,700万円
標準モデル(年間60件、平均単価110万円)
売上:6,600万円 → 粗利3,300万円 → 営業利益1,400万円 → 可処分所得約950万円
低稼働モデル(年間40件、平均単価105万円)
売上:4,200万円 → 粗利2,100万円 → 営業利益400万円 → 可処分所得約280万円
施行件数が30件を下回ると固定費を吸収しきれず赤字化しやすい傾向があり、60件超で損益分岐点を大きく超える構造です。繁忙期(12〜3月)の施行獲得と閑散期の固定費圧縮が利益安定のカギとなります。
■メリットとリスクを正しく理解する
フランチャイズはブランド力とノウハウを得られる一方、ロイヤリティや運営ルールの制約が伴います。長期視点でリターンとリスクを比較し、自身のライフスタイルや資金計画に合致するかを見極めることが重要です。
●フランチャイズ加盟の主なメリット
・24時間搬送網とコールセンター利用で夜間対応負荷を軽減
・広告共同出稿により早期に施行件数を確保
・標準化されたマニュアルと研修で品質を維持
●初期投資と継続コストの内訳
初期費用の60〜75%を内装設備・車両が占め、金融機関融資でレバレッジを効かせられます。月額固定費としてロイヤリティ、人件費、車両維持費が発生し、件数減少時の負担が課題となります。
●業務の難しさと精神的負荷
遺族対応は感情労働の側面が強く、深夜の搬送や緊急対応も多い業務です。スタッフのシフト制導入やメンタルケア体制を整え、長期的に働ける環境づくりが欠かせません。
■他業種との比較で見える葬儀業の特性
葬儀業は単価が高く在庫リスクが低い一方、需要は人口動態に依存し緊急対応が必須という特殊性があります。
【業態別収益構造比較(目安値)】
葬儀:単価100万円前後、需要変動小、在庫リスク低
飲食:単価3千〜8千円、需要変動大、食材ロスリスク
介護:月額16万円前後、要介護認定者数に連動、シフト人件費大
小売:単価2千〜2万円、景気影響大、仕入在庫リスク
固定費が高いホール保有型では稼働率の維持が不可欠ですが、提携会館型やモバイル型は固定費を変動費化し、損益分岐点を下げることができます。
■フランチャイズ本部の選び方と評価基準
加盟前には本部の実績と支援内容を多角的に比較し、契約条件の詳細を確認することが不可欠です。
●本部選定の際に重視すべき項目
・商圏分析の精度と専有範囲の明確化
・広告チャネルと紹介提携ネットワークの実績
・追加投資が発生するタイミングと金額の透明性
●加盟前に確認すべき契約内容
ロイヤリティ算出基準(売上ベースか粗利ベースか)、契約更新料、中途解約違約金、ブランドイメージ維持指針など、長期運営を想定した条項を精査しましょう。
●地域密着型と広域展開型の違い
地域密着型はロイヤリティが低めでコミュニティとの関係を重視する運営が求められます。広域展開型は広告支援が強く早期認知を得やすい反面、統一オペレーション遵守で独自性が制限されがちです。
■失敗しがちなポイントと、対応策
以下は、特定のフランチャイズ本部を指した失敗事例ではなく、あくまでも比較対象となる、同じ業態全体で起こりがちな一般論としての考察です。適切な準備と運営で十分回避できますので、参考にしてください。
●立地選びを誤って集客が伸びない
人口3万人未満の商圏で会館型を開業すると稼働率が想定を下回りやすい傾向があります。対策として、火葬場から10km以内かつ主要搬送ルート上に看板を複数設置し、搬送車の動線に沿った立地を確保することが重要です。
●業務内容の把握不足で現場が混乱
葬儀の進行手順を理解しないまま施行を重ねると、通夜・告別式・火葬のスケジュール調整でミスが起こりやすくなります。開業前に3施行以上を同行研修し、遺族面談チェックリストを作成することでオペレーションを安定させられます。
●本部とのミスマッチでサポートが活用できない
本部の広告戦略と地域特性が合わない場合、想定件数に届かない事例があります。月次面談で広告予算配分を見直し、地域広報(寺院・自治会との連携)を追加実施して不足分を補いましょう。
■現場から見るリアルな運営実態
葬儀オーナーの1日は搬送準備、遺族打合せ、式場設営と多岐にわたります。繁忙期は深夜帯の呼び出しが増えるため、体調管理とスタッフ配置の柔軟性が求められます。
●オーナー経験者の声と日常業務の実例
・夜間搬送が重なった翌日は午後から業務開始し、睡眠時間を確保
・家族葬では遺族との距離が近く、心理的サポートが感謝につながる
・配車手配や会食予約など周辺サービスをワンストップ提供し単価を向上
●一人開業と複数人運営の違い
一人開業はコスト圧縮に優れるものの休暇確保が難しい課題があり、複数人体制は固定費増を稼働率向上で補いつつサービス品質を安定させます。
●地域性による葬儀需要の違い
都市部では直葬やリビング葬が浸透し、小規模プラン比率が高い一方、地方や島嶼部では一般葬が主流です。地域文化に合わせたプランを用意し、価格だけでなく儀礼性やサポート体制を訴求することで顧客満足度を高められます。
■葬儀ビジネスに向いている人の特徴
葬儀は遺族対応が中心となるため、共感力と冷静な段取り力を兼ね備えた人に適しています。地域ネットワークを築く営業力も重要で、ケアマネ・寺院・病院との連携が件数獲得の鍵を握ります。
●必要な資質・経験と活かせるスキル
・福祉や接客業で培った対人コミュニケーションスキル
・クレームや緊急対応の経験
・粗利計算や原価管理の基礎知識
●営業活動や顧客対応における注意点
過度なプラン提案は遺族の負担感につながるため、複数プランを提示し自主的に選べる体制を整えましょう。式後アンケートで不満点を把握し迅速に改善することで口コミ評価を高められます。
■よくある質問(FAQ)
初心者でも開業は可能?
加盟前研修と本部の現場同行があれば未経験者でも運営できますが、開業後3か月は本部担当者の継続サポートを受ける体制が望ましいです。
運転免許や資格は必要?
霊柩車運転には普通二種免許が推奨されます。葬祭ディレクター資格は必須ではありませんが取得すれば信頼性が向上します。
葬儀以外のサービス展開はできる?
遺品整理や海洋散骨など周辺サービスをセットにすると客単価が上がり、年間収益の底上げが期待できます。
■検討中に押さえるべき最終チェックリスト
●加盟前に確認すべき5つの視点
商圏人口と競合会館数
初期投資総額と自己資金比率
ロイヤリティ算定基準と支払いタイミング
本部サポート範囲と研修期間
契約解除条項と更新費用
●開業後3か月の行動スケジュール
1か月目:施行フローを確認しスタッフロールプレイを実施
2か月目:地域ケアマネ・医療機関を週5件訪問し提携を強化
3か月目:利用者アンケートを10件回収し改善策を即時実装
高収益が見込める一方で精神的負荷と夜間業務が伴う葬儀フランチャイズ。十分な準備と適切な本部選定、長期的な事業計画を立てることで、年収1,000万円は現実的な目標になります。自らの資質とライフスタイルに合った運営モデルを見極め、持続可能な形で地域に寄り添うサービスを提供していきましょう。
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